HOME > ドクターインタビュー > 東クリニック 院長 東哲徳先生
内診台のすぐそばの壁にもイラストが貼ってあり、検査の際にもこれらを使いながら患者さんに説明を行っているそうです。生理(月経)の周期などもすぐに説明できるように、3ヵ月分のカレンダーも貼ってあります。
日々、クリニックを訪れる患者さんのなかには10代の若い世代も多いといいます。診察を通じて東先生は、近年の若年層への性感染症の蔓延や望まない妊娠の増加に危機感を抱いておられます。
「成長するにしたがって性に目覚めていく子どもたちに、性の正しい知識をきちんと教育していかないと、性感染症の蔓延や望まない妊娠の増加など、多くの問題につながっていってしまいます。現実に、日本ではクラミジアやコンジローマ、HPV(ヒトパピローマウイルス)などの性感染症が若い世代に増えています。行政が指導する範囲の性教育と子どもたちの現状とには、大きなギャップがあります。だからこそ、母性サイドから現状を知る私たちが、若い世代に向けてできる限り知識を伝えたいと思っています。今や避妊具、低用量ピルの正しい知識はミニマムスタンダードとして教育を行うべきだと考えています」と東先生。
性感染症への感染は、不妊へとつながったり、将来の赤ちゃんへの感染につながる危険があります。そのため、診療の傍ら各地へ講演に出向いたり、院内で学生を対象に講和会を開いたり、性教育活動にも積極的にとり組んでおられる東先生。
「世の中には防げる病気と防げない病気がありますが、性感染症は防ぐことのできる病気です。そのためには、性行為には性感染症のリスクや妊娠の可能性が伴うことを知り、予防の手立てとして避妊具や低用量ピルの正しい知識を知り、相手への思いやりを持つことです」と、東先生は若い人たちへメッセージを発信しています。
また、「タバコは、女性の場合、月経不順、排卵障害、膣炎、ひいては不妊、男性の場合にも男性不妊を引き起こす悪のゲートウェーです」と喫煙の害を訴え続けています。
学校で行う講演などの最後には、子どもたちに向けて「もし何か困ったことがあったら、学校の養護の先生でもいいし、泌尿科の先生でもいいし、私たち産婦人科のところでもいいので相談にいらっしゃい。忙しい、面倒くさい、恥ずかしい、怖い、この4つは取り払おう。内診などあなたたちが恥ずかしいと感じることはしないから、気になることがあるときは堂々と来なさい。私たちは君たちの味方なのだから」とも伝えているそうです。
クリニックに、どうしてこんなタバコやライターの山が!? とビックリしてしまいますが、実はこれは東先生の禁煙指導の賜物です。同院では、喫煙している人には低用量ピルは出さないことを徹底しておられます。「女性にとって、タバコはよくないんですよ。ほら、これを見てごらんなさい」と、データや新聞記事を見せながら患者さんに熱心に禁煙指導を行っておられる東先生。タバコを吸うことでいかに卵巣内の血液の流れが悪くなるか、また、がんなどの大きな病気につながるリスクがどれだけ高くなるか、実例を指し示しながらの東先生の話に、患者さんが「先生、私、タバコはやめます」と自ら置いていかれたのだそうです。それが1つ、2つと増えて、いつしか100個以上の数に。「話を聞いて、タバコを置いていってくれるのは、本当にうれしいですね」と笑顔の東先生でしたが、「わたしの願いは、戦争と差別とタバコのない世界です」とおっしゃる先生のお顔は真剣そのものでした。