HOME > ドクターインタビュー > ひなた女性クリニック 谷口久枝先生
<※この記事の情報は2009年公開時点のものです。>
谷口レディースクリニックでは、来院したすべての患者さんを対象に低用量ピルの説明を行っておられるそうです。
「性交経験の有無や、妊娠希望の有無にかかわらず、低用量ピルの知識をまず持ってもらおうと考えています。低用量ピルは、避妊はもちろんですが、生理痛(月経痛)が軽くなる、生理(月経)の量が減る、時期を調整できるなどのメリットがあります。こうした魅力を、すべての女性に知ってもらいたいと思っています。そうすることで、話を聞いたお母さんが『受験生の娘に…』というように、広がっていくことがありますね。また、低用量ピルの服用を希望して受診したことが子宮内膜症や子宮筋腫などの病気を発見するきっかけになることもあります」(谷口先生)。
患者さんには、まず看護師長の伊藤さんを中心とした看護師さんが説明に当たるそうです。医師の診察の前の問診に合わせて低用量ピルの紹介をしておられます。
「皆さん、真剣に話を聞いてくださいます。避妊だけでなく、問診票で患者さんの情報を確かめながら、こういう効果もあるんですよとお伝えすると、関心をもってもらえることが多いですね」と伊藤さん。
低用量ピルは毎日の服用が大切ですが、なかには「続かないわ…」と不安に思う患者さんもいらっしゃるそうです。そういう方には「歯磨きは毎日されますよね。入浴も毎日なさっていますよね。もし、疲れてお風呂に入らない夜があっても、次の日にはシャワーを使いますよね。それと同じですよ。低用量ピルも1日1回同じ時間に飲むことが原則ですが、忘れてしまったときは思い出したときにすぐ飲んでくださいね。あとはいつもどおりです」と、毎日当たり前のように続けている日常の行動を例えに説明をするという伊藤さん。洗顔やお化粧、コンタクトレンズ、入浴といった生活のリズムの中に服用のタイミングを組み込むなど、判りやすく飲み忘れのないよう話を工夫しておられるそうです。
こちらの部屋で低用量ピルの説明を行っているそうです。効果を分かりやすくまとめたパンフレットなどを用いながら、丁寧な説明を実施されています。
「生理痛を『生理のときはこういうもの』と、当たり前のようにとらえている方も少なくありません。ですが、低用量ピルの服用で症状が改善され、『こんなに軽くなるものなんだ』と、初めて自身の生理痛がいかにつらいものだったかを気づく人もいます。また、2008年に厚生労働省が低用量ピルの1つに子宮内膜症に伴う月経困難症の適応を認めてくれました。副作用も少なく国が効果も認めたこの治療法を1人でも多くの方に知ってもらいたいですね」(谷口先生)。
谷口先生は月に2回ほど、地元の中学校や高校に出向き、性教育の講演といった活動も行っておられます。
「婦人科という特性上、どんな医師が、どんな診療を行っているのかわからないと、より足を踏み入れづらいと思います。ですから、講演を通じて、まず私の顔を知ってもらい、『何かあったら相談に来てくださいね』と伝えています」(谷口先生)。
こうした活動から来院につながる患者さんも多いそうです。
院内の掲示板には様々な情報が貼り出してありますが、トイレの中にも、病気についてのさまざまな情報が貼り出してあります。
講演先ではよく「婦人科では、どんな診察をするのですか?」と質問を受けることもあるそうです。
「婦人科イコールややこしい検査、絶対に内診があるというイメージをお持ちの方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。症状によっては、問診だけを行ったり、看護師による保健指導を行ったりと、その方の状況に合わせて診察、検査を実施します。性交経験のない女性には内診は行わず、腹部からの超音波検査も可能です。あわてない検査はクリニックに十分慣れていただいてから後日ゆっくりと行うこともできます」と、診療の実際を紹介し、不安を取り除くメッセージを発信しているそうです。
開院当初から谷口先生をサポートしているスタッフの皆さん。左から事務の間部さん、看護師長の伊藤さん、谷口先生、事務長の深田さん。
今年で開院10年目を迎える同院の一番の自慢は、チーム力。谷口先生を中心に、看護師、事務スタッフが見事な連係プレーで日々の診察を行っています。
例えば、患者さんの抱える背景や事情など、スタッフが事前にキャッチした情報を谷口先生に伝えて診察をスムーズにし、先生の指導のもとで事務スタッフも低用量ピル飲み忘れ時の対応をサポートしています。こうした連携によりきめ細かい患者さんへの対応を実現しています。「私の注文に応えてくれる心強いスタッフですね」と谷口先生。